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凍える月~吉之助の恋~
第10章 第四話 【はまなすの子守唄】 一
お絹の眼に涙が溢れた。まだ二歳にもならぬ幼子が見も知らぬ人間に連れ去られ、一体どうしていることやらと想像するだけで居たたまれない。お彩がいなくなったのは、お絹が里絵と他愛ない話に興じている、そのほんのわずかの間であった。よく眠っていたので置いてきたが、お絹はこのことをいかほど後悔しているか知れない。
背負ってもあやしても、なかなか泣きやまず、さんざんむずかった後やっと眠ったので、起こしても可哀想だと思ったのが仇になった。普段からさほど手も掛からず、いくらむずかっても常ならば背負えば機嫌が直るのに、今日に限って負うてもいつまでも泣き喚いていたのは、赤子なりに何か身に迫る危険を察知していたのだろうか。
背負ってもあやしても、なかなか泣きやまず、さんざんむずかった後やっと眠ったので、起こしても可哀想だと思ったのが仇になった。普段からさほど手も掛からず、いくらむずかっても常ならば背負えば機嫌が直るのに、今日に限って負うてもいつまでも泣き喚いていたのは、赤子なりに何か身に迫る危険を察知していたのだろうか。