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凍える月~吉之助の恋~
第10章 第四話 【はまなすの子守唄】 一
今の伊八の憔悴ぶりからはお彩への紛れもない情愛が痛いほどに伝わってきた。それは紛うことない子を失って悲嘆に沈む「父」の横顔に違いなかった。
お絹が伊八に感謝の想いでいっぱいになったその時、表の戸が開いた。
「お絹さん」
その声は里絵のものだった。お絹は急いで三叩土に降りた。後から涙を拭いもせずにいたことに気付き、慌てて袂でごしごしと顔を拭いた。
そんなお絹を里絵は痛ましげに見つめた。
「私にお気遣いなぞ無用です。お絹さん。うちの人が少し気になることを申すのですよ」
里絵が案じ顔で言った。
晩になって、いよいよお彩が見つからぬとなって、事態はより緊張感を増してきた。そんな時、里絵の良人岩倉拓馬がポツリと思い出したように言ったというのだ。
お絹が伊八に感謝の想いでいっぱいになったその時、表の戸が開いた。
「お絹さん」
その声は里絵のものだった。お絹は急いで三叩土に降りた。後から涙を拭いもせずにいたことに気付き、慌てて袂でごしごしと顔を拭いた。
そんなお絹を里絵は痛ましげに見つめた。
「私にお気遣いなぞ無用です。お絹さん。うちの人が少し気になることを申すのですよ」
里絵が案じ顔で言った。
晩になって、いよいよお彩が見つからぬとなって、事態はより緊張感を増してきた。そんな時、里絵の良人岩倉拓馬がポツリと思い出したように言ったというのだ。