この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
凍える月~吉之助の恋~
第10章 第四話 【はまなすの子守唄】 一
―この辺じゃちょいと見かけないほどの別嬪だったな。
拓馬がはきとそう言ったというのだ。
―この辺では見かけないほどの美人。
お絹の心にこの時、何故か浮かんだ男の面影があった。それは、まるでこの世のものとも思えぬほどの美貌を持った男だった。
だが、お絹は即座に自分の中に浮かんだ考えを打ち消した。あの男は、お彩の実の父親吉之助(よしのすけ)は既に亡くなっている。今から丁度二年前、睡蓮の開く池のほとりでお絹を身を挺して庇って亡くなった。今更、あの男が生き返るはずもなく、ましてや、お彩を奪い返しにくるはずもない。吉之助は最後までお絹と腹の子の幸せを願いながら死んでいったのだ。
拓馬がはきとそう言ったというのだ。
―この辺では見かけないほどの美人。
お絹の心にこの時、何故か浮かんだ男の面影があった。それは、まるでこの世のものとも思えぬほどの美貌を持った男だった。
だが、お絹は即座に自分の中に浮かんだ考えを打ち消した。あの男は、お彩の実の父親吉之助(よしのすけ)は既に亡くなっている。今から丁度二年前、睡蓮の開く池のほとりでお絹を身を挺して庇って亡くなった。今更、あの男が生き返るはずもなく、ましてや、お彩を奪い返しにくるはずもない。吉之助は最後までお絹と腹の子の幸せを願いながら死んでいったのだ。