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凍える月~吉之助の恋~
第10章 第四話 【はまなすの子守唄】 一
「ごめんなさいね。こんな大切なことを今頃になって言うなんて」
里絵は心底済まなさそうに言った。が、里絵にも拓馬にもそれ以上は何も手懸かりらしいものを知りようはずもなく、里絵は幾度も謝って帰っていった。
里絵が帰った後、狭い家の中はそれまで以上の静けさに包まれた。まるで静けさが重たい鉛となってお絹たちを押し潰そうとでもするかのようだった。
じっと黙っていては、その鉛のような静寂に息が詰まってしまいそうな気がして、お絹は口を開いた。
「お前さん。里絵様のおっしゃっていた美人っていうのは一体誰なんでしょうか」
だが、伊八がそれを知る由もない。黙って力なく首を振る良人にお絹はたまらず叫んだ。
里絵は心底済まなさそうに言った。が、里絵にも拓馬にもそれ以上は何も手懸かりらしいものを知りようはずもなく、里絵は幾度も謝って帰っていった。
里絵が帰った後、狭い家の中はそれまで以上の静けさに包まれた。まるで静けさが重たい鉛となってお絹たちを押し潰そうとでもするかのようだった。
じっと黙っていては、その鉛のような静寂に息が詰まってしまいそうな気がして、お絹は口を開いた。
「お前さん。里絵様のおっしゃっていた美人っていうのは一体誰なんでしょうか」
だが、伊八がそれを知る由もない。黙って力なく首を振る良人にお絹はたまらず叫んだ。