この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
凍える月~吉之助の恋~
第10章 第四話 【はまなすの子守唄】 一
結局、一夜明けてもお彩の行方は掴めなかった。むろん、昨日の中に番屋にも届け出ていたし、岡っ引きが事情をひととおり訊きにはきたのだが、型どおりの質問をしただけで親身に探そうとはしてくれなかった。所詮、お上は貧乏人の子どもが一人かどわかされたくらいでは真剣に動こうとはしないのだ。このようなところにも当時の身分社会の矛盾が浮き彫りになっていた。
伊八とお絹は一睡もせず、甚平店の住人も交代で夜通し探し回ったのも徒労に終わった。
朝になって、お絹は飯を炊き、味噌汁とちゃぶ台に並べたけれど、当然ながら伊八は箸を取ろうともしない。
「お前さん、少しでも何か食べた方が良いんじゃありませんか」
伊八とお絹は一睡もせず、甚平店の住人も交代で夜通し探し回ったのも徒労に終わった。
朝になって、お絹は飯を炊き、味噌汁とちゃぶ台に並べたけれど、当然ながら伊八は箸を取ろうともしない。
「お前さん、少しでも何か食べた方が良いんじゃありませんか」