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凍える月~吉之助の恋~
第10章 第四話 【はまなすの子守唄】 一
「お前さん―」
お絹もまた暗澹たる想いで伊八を見た。
岩倉拓馬が見たというその美貌の女。間違いなくその女がお彩失跡の鍵を握る人間に相違ない。だが、滅多とおらぬ美貌だということ以外に、その女の素性を知るすべは何一つないというのが現状だ。一体、広い江戸中をどうやって、その女を捜せば良いのか皆目見当もつかない。
まるで出口のない果てしない森にさまよい込んでしまったようなものだ。何とかして、その複雑に入り組んだ森を出る方法はないものか―。お絹が考えに沈んでいたその時。
「済まねえが、飾り職の伊八さんってえのは、ここかえ」
表の障子越しに男のだみ声が響いた。
その瞬間、伊八とお絹はほぼ時を同じくして顔を上げ、見つめ合った。
お絹もまた暗澹たる想いで伊八を見た。
岩倉拓馬が見たというその美貌の女。間違いなくその女がお彩失跡の鍵を握る人間に相違ない。だが、滅多とおらぬ美貌だということ以外に、その女の素性を知るすべは何一つないというのが現状だ。一体、広い江戸中をどうやって、その女を捜せば良いのか皆目見当もつかない。
まるで出口のない果てしない森にさまよい込んでしまったようなものだ。何とかして、その複雑に入り組んだ森を出る方法はないものか―。お絹が考えに沈んでいたその時。
「済まねえが、飾り職の伊八さんってえのは、ここかえ」
表の障子越しに男のだみ声が響いた。
その瞬間、伊八とお絹はほぼ時を同じくして顔を上げ、見つめ合った。