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凍える月~吉之助の恋~
第2章 第一話 【凍える月~吉之助の恋~】 二
「俺は寺に捨てられていた赤児だった。死んじまう間際のところを親分に拾われた。情け容赦もない親分だが、俺にとっては生命の恩人だ」
男はどこか遠い眼で語った。その話を聞いたお絹は、男と蠍の以蔵の関係が伊八と喜作に似ていると思った。伊八も飲んだくれの父親の許を飛び出し江戸に身一つで出てきた寄る辺なき身を喜作に拾われ、その弟子となったのだ。
が、両者の拘わりは似ているようで、違う。決定的に違うのは伊八と喜作が互いに実の父子にも近い情愛で結ばれていたのにひきかえ、以蔵と男の間にはそれがなかったことだろう。
「そんな生き方をして、淋しくはないの?」
お絹が問うと、男はフッと笑った。その視線は冷たいというよりは、むしろ哀しげに見える。
男はどこか遠い眼で語った。その話を聞いたお絹は、男と蠍の以蔵の関係が伊八と喜作に似ていると思った。伊八も飲んだくれの父親の許を飛び出し江戸に身一つで出てきた寄る辺なき身を喜作に拾われ、その弟子となったのだ。
が、両者の拘わりは似ているようで、違う。決定的に違うのは伊八と喜作が互いに実の父子にも近い情愛で結ばれていたのにひきかえ、以蔵と男の間にはそれがなかったことだろう。
「そんな生き方をして、淋しくはないの?」
お絹が問うと、男はフッと笑った。その視線は冷たいというよりは、むしろ哀しげに見える。