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凍える月~吉之助の恋~
第10章 第四話  【はまなすの子守唄】 一
 では、何故、お縞が留七の許を出ていったか―。それは、やはり子宝の授からなかったことが最大の原因であった。留七は話し下手らしく訥々と語った。
 確かに子どもはいなかったけれど、二人は仲睦まじく暮らしていた。所帯を持ったばかりの時分は裏店暮らしではあったが、留七は地道に働き、お縞も結婚前からの縄暖簾勤めを続け、やがて五年めには表店に居を構えるに至った。小さいながらも一軒家に引っ越し、将来は孤児(みなしご)でも引き取って育てようかと話し合っていた矢先、お縞がある日興奮した面持ちで打ち明けてきた。
「実は偶然生き別れになった弟と再会したのだと、あいつは随分とはしゃいだ様子だったな」
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