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凍える月~吉之助の恋~
第10章 第四話 【はまなすの子守唄】 一
たとえ極道の親分でも、吉之助にとっては育ての親だ。自分を無情にも捨て去った生みの親よりもよほど恩義も情もあった。以蔵という養い親の存在が吉之助にとって不幸の源になるのではと、お縞は案じたのだ。果たして、その予感は現実となった。以蔵は吉之助に一人の娘を拉致し、手込めにするようにと命じた。すべては以蔵の私怨から発したものであったが、吉之助に以蔵の命が拒めるはずもなかった。
そのお絹という娘には何の罪もなく、お絹の恋人伊八が以蔵の手下の一人を堅気に戻すために力を貸したにすぎなかった。たかが下っ端の子分一人が抜けたというそれだけの理由で、以蔵は伊八とお絹を憎み、その報復としてお絹をかどわかしたのである。が、運命は時として思いもかけぬことが起こる。当の吉之助がお絹という娘に惚れたのだ。
そのお絹という娘には何の罪もなく、お絹の恋人伊八が以蔵の手下の一人を堅気に戻すために力を貸したにすぎなかった。たかが下っ端の子分一人が抜けたというそれだけの理由で、以蔵は伊八とお絹を憎み、その報復としてお絹をかどわかしたのである。が、運命は時として思いもかけぬことが起こる。当の吉之助がお絹という娘に惚れたのだ。