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凍える月~吉之助の恋~
第10章 第四話 【はまなすの子守唄】 一
―許してくれ。
吉之助はその時、取り返しのつかぬことしたのを自覚した。折しもその頃、お絹を殺すようにと以蔵からの命令が下った。だが、吉之助が最早、以蔵に従うはずもなかった。
当時、吉之助がお縞の店をふらりと訪れた。
しばらく顔を見せなかった弟は、お縞に別れを告げにきたのだと言った。愕きを隠せぬお縞に吉之助は悲壮な覚悟を秘めた眼を向けた。お絹の懐妊からすべての事情を話した上で、吉之助は決然と言った。
―俺はお絹を守る。俺の生命に代えても、お絹と腹の子を守り抜く。相手がたとえ以蔵親分だとしても、一歩たりとも退かねえ。あいつらには指一本触れさせやしねえ。
吉之助はその時、取り返しのつかぬことしたのを自覚した。折しもその頃、お絹を殺すようにと以蔵からの命令が下った。だが、吉之助が最早、以蔵に従うはずもなかった。
当時、吉之助がお縞の店をふらりと訪れた。
しばらく顔を見せなかった弟は、お縞に別れを告げにきたのだと言った。愕きを隠せぬお縞に吉之助は悲壮な覚悟を秘めた眼を向けた。お絹の懐妊からすべての事情を話した上で、吉之助は決然と言った。
―俺はお絹を守る。俺の生命に代えても、お絹と腹の子を守り抜く。相手がたとえ以蔵親分だとしても、一歩たりとも退かねえ。あいつらには指一本触れさせやしねえ。