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凍える月~吉之助の恋~
第10章 第四話 【はまなすの子守唄】 一
この時、吉之助は育ての親である以蔵と完全に袂を分かつ決意をしたのだ。たとえ以蔵と決別することになっても、惚れた女と我が子を己れの生命を賭けて守り通す覚悟を決めたのである。
事実、吉之助はその言葉どおりを忠実に貫き通した。以蔵が放った刺客と闘い、吉之助は亡くなった。むろん、お絹は無事だった。
「吉之助との出逢いがあっしら夫婦には運の尽きだったのさ」
留七は最後に苦渋に満ちた顔で言った。
「あっしは、あいつが吉之助のような極道と関わり合うことに端から反対だった。だが、三十年も前に生き別れになった弟に逢えたとはしゃいでいる女房に、吉之助と逢うなとは到底言えなかった。吉之助と再会した時、玄武から一緒に江戸に出てきた両親はとうに亡くなっちまってたし、あいつはもうこの世に身内と呼べる人間はいねえと思い込んでたんだ。
事実、吉之助はその言葉どおりを忠実に貫き通した。以蔵が放った刺客と闘い、吉之助は亡くなった。むろん、お絹は無事だった。
「吉之助との出逢いがあっしら夫婦には運の尽きだったのさ」
留七は最後に苦渋に満ちた顔で言った。
「あっしは、あいつが吉之助のような極道と関わり合うことに端から反対だった。だが、三十年も前に生き別れになった弟に逢えたとはしゃいでいる女房に、吉之助と逢うなとは到底言えなかった。吉之助と再会した時、玄武から一緒に江戸に出てきた両親はとうに亡くなっちまってたし、あいつはもうこの世に身内と呼べる人間はいねえと思い込んでたんだ。