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凍える月~吉之助の恋~
第10章 第四話 【はまなすの子守唄】 一
「ひと月ほど前だったかな。あいつがやっぱり興奮した様子で言うんだ。お絹とかいう女はどうやら無事に子を生んで、子どもも元気に育っているようだって。あいつは吉之助の死後もずっとお絹さんとその赤ン坊の行方を追っていたんだ。あっしは迂闊にもそのことをそれまで知らなかった。お縞の奴、吉之助の忘れ形見の赤ン坊をどうでも引き取りてえと言い張りやがった。あっしは止めとけと何度も言ってやったんだよ。昔のことを忘れて新しい幸せをやっと掴んだ人間に、今更嫌なことを思い出させる必要はねえとな」
そこで留七は言葉を区切り、意味ありげな顔で伊八を見た。
「伊八さん、あんただって、吉之助の娘を自分の子として育てるのには相応の覚悟が要っただろうよ」
そこで留七は言葉を区切り、意味ありげな顔で伊八を見た。
「伊八さん、あんただって、吉之助の娘を自分の子として育てるのには相応の覚悟が要っただろうよ」