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凍える月~吉之助の恋~
第10章 第四話 【はまなすの子守唄】 一
「おい、待ってくんな。今のは全くの当て推量だぜ。お縞は別に玄武へ帰ると言って出ていったわけじゃなし、あんたらがはるばる玄武に行ったって、お縞やあんたらの子どもに逢えるとは限らねえぜ」
根は正直な男なのだろう、留七は狼狽えたように言う。だが、伊八は真顔で首を振った。
「いや、七年も連れ添ったあんたの考えることだ。俺は恐らくは違(ちげ)えはねえと踏んでる。それに、留七さん。ここで俺たち夫婦が雁首揃えて待ってても、何一つお彩を見つける手懸かりは掴めねえ。一か八か、あんたを信じて玄武に行ってみるよ」
伊八の気持ちは既に固いらしく、その眼には微塵の迷いも躊躇いもなかった。伊八がその気ならば、もちろん、お絹も従う覚悟はできている。
根は正直な男なのだろう、留七は狼狽えたように言う。だが、伊八は真顔で首を振った。
「いや、七年も連れ添ったあんたの考えることだ。俺は恐らくは違(ちげ)えはねえと踏んでる。それに、留七さん。ここで俺たち夫婦が雁首揃えて待ってても、何一つお彩を見つける手懸かりは掴めねえ。一か八か、あんたを信じて玄武に行ってみるよ」
伊八の気持ちは既に固いらしく、その眼には微塵の迷いも躊躇いもなかった。伊八がその気ならば、もちろん、お絹も従う覚悟はできている。