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凍える月~吉之助の恋~
第11章 第四話  【はまなすの子守唄】 其の参 
    【其の弐】

 伊八とお絹が江戸を発ったのは、その日の昼前であった。万が一、自分たちがおらぬ間にお彩が江戸で見つかった際のことを岩倉拓馬とその妻里絵によくよく頼んできた。
 江戸から玄武までは徒歩(かち)で数日はかかる。伊八とお絹は主街道を北へと進んだ。休憩は必要最低限にとどめ、出来うる限り歩き続け
たお陰で、四日目には玄武藩に入った。留七の話によると、お縞の生まれたのは玄武藩藩主の代々の居城である北方城(きたがたじょう)を中心とする城下町だそうだ。現在の藩主は藤堂景寛(かげとよ)である。
 北方城下に入ったのは江戸を出て四日目の夕刻であった。
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