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凍える月~吉之助の恋~
第11章 第四話 【はまなすの子守唄】 其の参
伊八とお絹は城下の賑わいのただ中にある小さな旅籠に投宿した。玄武藩は石高は三万石で、厳しい冬の寒さのため米を初めとする作物も収穫高は知れているという。お世辞にも富める国だとは言い難いが、城下町は予想に反して大勢の人々で賑わっており、その中には他国から来たと思われる旅姿の者も多く見かけられた。
その旅籠「鳴海屋」の二階の一室で、お絹は玄武に来て一日目の夜を過ごした。玄武藩の特産の一つはハマナスの花であるという。海に面するこの国では、初夏のこの季節、海岸にハマナスの花がそれこそ一面に群生する。夕飯を運んできた旅籠の仲居が一度は見ておいて損はないほどの見事な眺めだと教えてくれた。
その旅籠「鳴海屋」の二階の一室で、お絹は玄武に来て一日目の夜を過ごした。玄武藩の特産の一つはハマナスの花であるという。海に面するこの国では、初夏のこの季節、海岸にハマナスの花がそれこそ一面に群生する。夕飯を運んできた旅籠の仲居が一度は見ておいて損はないほどの見事な眺めだと教えてくれた。