この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
凍える月~吉之助の恋~
第11章 第四話 【はまなすの子守唄】 其の参
今は夕飯も終え、二人だけの部屋であった。狭いけれど、掃除も行き届いていて、こざっぱりとした部屋である。向かい合って座る伊八は、宿屋のお仕着せの浴衣を着て胡座をかいている。長い脚を組んだ上に両肘をついて顎を乗せていた。
留七からお縞の生家があったという場所をあらかじめ聞いているので、明日はとにかくその界隈を訪ね歩いてみることになっている。
「明日は海辺に行って、ハマナスの花でも見てくるとするか」
伊八がなにげなく言うのも、ひとえにお絹の気を少しでも慰めようとするためである。
留七からお縞の生家があったという場所をあらかじめ聞いているので、明日はとにかくその界隈を訪ね歩いてみることになっている。
「明日は海辺に行って、ハマナスの花でも見てくるとするか」
伊八がなにげなく言うのも、ひとえにお絹の気を少しでも慰めようとするためである。