この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
凍える月~吉之助の恋~
第11章 第四話 【はまなすの子守唄】 其の参
「お前さんはハマナスの花を見たことがあるんですか」
お絹も良人の気持ちがよく判るゆえ、わざと明るく訊ねた。
「いや、ハマナスは北の国しか咲かねえからな。話には聞いたことはあっても見たことはねえ」
「実は柔らかいし甘酸っぱくて、とても美味しいそうですよ。土地の人は浜辺に実る梨だから【浜梨】と呼ぶそうですけど、いつのまにか、【浜梨】が【ハマナス】となまったとか、さっきの仲居さんが言ってましたっけ」
「そう言やア、そんなことを話してたな」
伊八が応え、お絹は微笑んだ。
「こんなことでもなければ、ここまで遠方の土地に来ることもなかったでしょうし、ハマナスの花にお眼にかかることもなかったでしょうよ」
お絹も良人の気持ちがよく判るゆえ、わざと明るく訊ねた。
「いや、ハマナスは北の国しか咲かねえからな。話には聞いたことはあっても見たことはねえ」
「実は柔らかいし甘酸っぱくて、とても美味しいそうですよ。土地の人は浜辺に実る梨だから【浜梨】と呼ぶそうですけど、いつのまにか、【浜梨】が【ハマナス】となまったとか、さっきの仲居さんが言ってましたっけ」
「そう言やア、そんなことを話してたな」
伊八が応え、お絹は微笑んだ。
「こんなことでもなければ、ここまで遠方の土地に来ることもなかったでしょうし、ハマナスの花にお眼にかかることもなかったでしょうよ」