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凍える月~吉之助の恋~
第2章 第一話 【凍える月~吉之助の恋~】 二
去年の夏、一味から吉蔵を抜けさせるべく画策した時、お絹は伊八と共に町外れの本源寺を訪ねた。本源寺は、開創は室町時代と古いが、数年前に年老いた住持が亡くなってからというもの、無住のまま荒れるに任せていた。
そこに以蔵が眼をつけ、江戸市中に幾つもある、いかさま賭場の一つとして本源寺を選んだのだ。むろん、それらの賭場の胴元は以蔵である。以蔵は賭場に通ってくる大店の旦那衆にいかさま博打を仕掛け、あり金を余さず巻き上げるという悪辣な手法で大金を手にしていた。
本源寺を訪ねたときの伊八は、いつもの彼とは全くの別人だった。以蔵一味の若いチンピラと対峙した伊八は凄みがあり、身体全体に殺気をまとわりつかせていた。お絹がよく知る、春の陽差しのような穏やかさなど微塵もなかった。
そこに以蔵が眼をつけ、江戸市中に幾つもある、いかさま賭場の一つとして本源寺を選んだのだ。むろん、それらの賭場の胴元は以蔵である。以蔵は賭場に通ってくる大店の旦那衆にいかさま博打を仕掛け、あり金を余さず巻き上げるという悪辣な手法で大金を手にしていた。
本源寺を訪ねたときの伊八は、いつもの彼とは全くの別人だった。以蔵一味の若いチンピラと対峙した伊八は凄みがあり、身体全体に殺気をまとわりつかせていた。お絹がよく知る、春の陽差しのような穏やかさなど微塵もなかった。