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凍える月~吉之助の恋~
第11章 第四話 【はまなすの子守唄】 其の参
生まれ落ちた吉之助を育てることなぞできようはずもなく、生まれた赤子は町外れの荒れ寺に捨てられ、「蠍の以蔵」と異名を取る男に拾われることになる。―それが吉之助の人生の悲劇の始まりだった。
一体今頃になって、何故お縞の素性をと、おはまは訝しんだ。お絹はおはまに丁重に礼を言い、伊八と共に足早に人混みに紛れた。
しかし、お縞のことを知る人間に逢えたのは、このおはまたった一人にすぎなかった。それ以後は一日足を棒にして歩き回っても何の手懸かりも掴めず、二人は疲れた身体に沈んだ心を抱えて旅籠に戻るしかなかった。その途中、お絹はふと伊八に言った。
「お前さん、浜辺に行ってみませんか」
一体今頃になって、何故お縞の素性をと、おはまは訝しんだ。お絹はおはまに丁重に礼を言い、伊八と共に足早に人混みに紛れた。
しかし、お縞のことを知る人間に逢えたのは、このおはまたった一人にすぎなかった。それ以後は一日足を棒にして歩き回っても何の手懸かりも掴めず、二人は疲れた身体に沈んだ心を抱えて旅籠に戻るしかなかった。その途中、お絹はふと伊八に言った。
「お前さん、浜辺に行ってみませんか」