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凍える月~吉之助の恋~
第11章 第四話 【はまなすの子守唄】 其の参
昨夜も旅籠の仲居に勧められたハマナスの花をひとめ見ようと思い立ったのである。伊八はどうやらあまり気乗りはしないように見えたが、お絹は少しでも伊八の気分を変えたくて、半ば強引に伊八を海岸に連れていった。
その光景をひとめ見た刹那、お絹は息を呑んだ。浜辺にハマナスの花が一斉に咲いている様は、鳴海屋の仲居の言っていたとおり、まさに圧巻だった。やや大ぶりの五弁の花は薔薇を髣髴とさせる形で、色は濃桃色、顔を近付けると芳香が漂ってくる。薔薇科の一種だけあって、棘が多い。全体的に派手やかな印象の花があまた開いているのは、例えようもないほど見事であった。
その光景をひとめ見た刹那、お絹は息を呑んだ。浜辺にハマナスの花が一斉に咲いている様は、鳴海屋の仲居の言っていたとおり、まさに圧巻だった。やや大ぶりの五弁の花は薔薇を髣髴とさせる形で、色は濃桃色、顔を近付けると芳香が漂ってくる。薔薇科の一種だけあって、棘が多い。全体的に派手やかな印象の花があまた開いているのは、例えようもないほど見事であった。