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凍える月~吉之助の恋~
第11章 第四話 【はまなすの子守唄】 其の参
折しも落日が今日最後の輝きを見せていた。あたかも浜梨と呼ばれるハマナスの実ののように鮮やかな紅色であった。残照がハマナスの花を照らし出し、すべてのものが茜色に染め上げられている中、黄色い蝶が一羽、鮮烈な軌跡を残して花の上をかすめてゆく。蝶はすぐに空高く舞い上がり、夕空の彼方へと吸い込まれるように消えていった。それはまるで幻想的な風景で、お絹はあまりに一瞬のことだったので、現ならぬことであったかと思ったほどだった。
やがて、水平線と交わった空の一部、西の端を太陽光の名残がほんのりと紅に染めた。しかし、それもほんのわずかの間のことで、空はすぐに完全に夜の色に染まり始めていた。
やがて、水平線と交わった空の一部、西の端を太陽光の名残がほんのりと紅に染めた。しかし、それもほんのわずかの間のことで、空はすぐに完全に夜の色に染まり始めていた。