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凍える月~吉之助の恋~
第11章 第四話 【はまなすの子守唄】 其の参
お絹は自分の手を見つめた。その手は水仕事や内職で荒れている。
―たとえ短い間でも幸せな刻を一緒に過ごすことができて、俺は幸せだったよ。
吉之助はこの手を握りながら息絶えていった。あの手の温もりが今もお絹の手に残っている。
お絹は無意識の中に重ね合わせた両手のひらに力を込めた。
―感謝してるぜ。―ありがとうよ。
お絹は祈るように眼を閉じたが、記憶の中の吉之助はただ微笑むだけだった。お絹の中の吉之助は初めて出逢った頃のような冷たい眼をしてはおらず、息を引き取る間際に見せた安らいだ表情をしている。その美しい面に幸せそうな微笑みさえ浮かべて。
その瞬間、お絹は叫んでいた。
「無駄死になんかじゃありません」
―たとえ短い間でも幸せな刻を一緒に過ごすことができて、俺は幸せだったよ。
吉之助はこの手を握りながら息絶えていった。あの手の温もりが今もお絹の手に残っている。
お絹は無意識の中に重ね合わせた両手のひらに力を込めた。
―感謝してるぜ。―ありがとうよ。
お絹は祈るように眼を閉じたが、記憶の中の吉之助はただ微笑むだけだった。お絹の中の吉之助は初めて出逢った頃のような冷たい眼をしてはおらず、息を引き取る間際に見せた安らいだ表情をしている。その美しい面に幸せそうな微笑みさえ浮かべて。
その瞬間、お絹は叫んでいた。
「無駄死になんかじゃありません」