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凍える月~吉之助の恋~
第12章 第五話 【雪うさぎ】 壱
【壱】
お絹は筆を持つ手をしばし止め、考えに耽る。
―本日早暁より、江戸にも初雪降りて、寒さ殊の外厳しく、幼子は風邪を引く。この降りでは明朝には積もると思われるものなり。何かと慌ただしき年の瀬に寒さは付きもののものなれど、裏店住まいの身にはいと厄介なるかな。
再び筆を持ち、そこまで書くと、今度は筆を硯に置き、帳面も閉じた。小さな吐息を洩らして立ち上がり、火鉢の火を熾(おこ)す。だが、隙間だらけの四畳半一間の裏店には容赦なく真冬の寒風が吹き込んでくる。到底、小さな火鉢一つで寒さを十分に凌げるものではなかった。
お絹は筆を持つ手をしばし止め、考えに耽る。
―本日早暁より、江戸にも初雪降りて、寒さ殊の外厳しく、幼子は風邪を引く。この降りでは明朝には積もると思われるものなり。何かと慌ただしき年の瀬に寒さは付きもののものなれど、裏店住まいの身にはいと厄介なるかな。
再び筆を持ち、そこまで書くと、今度は筆を硯に置き、帳面も閉じた。小さな吐息を洩らして立ち上がり、火鉢の火を熾(おこ)す。だが、隙間だらけの四畳半一間の裏店には容赦なく真冬の寒風が吹き込んでくる。到底、小さな火鉢一つで寒さを十分に凌げるものではなかった。