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凍える月~吉之助の恋~
第12章 第五話 【雪うさぎ】 壱
 喜作はその情報網を使って、直に吉蔵の居所を突き止めた。
 吉蔵は闇の世界の大元締と呼ばれる〝蠍の以蔵〟の手下となっていた。お絹は伊八と共に吉蔵に接触し、何とか吉蔵に堅気に戻るように説得した。これにより、吉蔵はついに以蔵一味を抜け、兄精治と共に川越に帰ることを決意した。川越に無事戻った吉蔵は家業の煙草屋を兄と共に切り盛りして、人が変わったかのように真面目に働いているという。
 すべてはそれで一件落着のように思えたのだが―、執念深い以蔵は喜作への恨みを忘れなかった。以蔵はかつて喜作と同じ親方の許で修業した飾り職人であった。
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