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凍える月~吉之助の恋~
第12章 第五話 【雪うさぎ】 壱
霜月の間、江戸は例年になく温かくて過ごしやすかったのだが、流石に師走に入ると、一挙に本格的な冷え込みに見舞われた。どうやら暦の方はちゃんと順序よくうつろってゆくのを心得ているようである。今朝早くからは今年初めての雪が降り始め、寒さは更に厳しいものになった。そのせいか、生後一年と少しになったばかりのお彩はクシュンと小さなくしゃみばかりを繰り返した。
伊八はそれを見て、風邪を引いたと大騒ぎする始末で、やれ医者に連れてゆけだの薬を呑ませろだのと口煩いほどだ。つまりは、それだけ、幼いお彩の身を案じているわけで、お絹は、伊八の口煩さすら嬉しく思うのだった。
伊八はそれを見て、風邪を引いたと大騒ぎする始末で、やれ医者に連れてゆけだの薬を呑ませろだのと口煩いほどだ。つまりは、それだけ、幼いお彩の身を案じているわけで、お絹は、伊八の口煩さすら嬉しく思うのだった。