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凍える月~吉之助の恋~
第2章 第一話 【凍える月~吉之助の恋~】 二
 吉之助がお絹に一歩迫った。お絹は思わず後ずさる。
「お前が大人しく言うことを聞かなけりゃア、伊八の野郎を科人にすることだってできるんだぞ?」
 お絹は慄えながら吉之助を見た。怖いくらいに艶(あで)やかな美貌が凄絶な微笑を刻んでいる。吉之助は微笑を浮かべて言った。
「だから、飲めと言ってるだろう? 少しくらい酔わないと、俺に抱かれる気にはなるめえ」
 吉之助を睨むような眼で見、お絹はひと想いに盃をクッと飲み干した。
 だが、盃を捧げ持つ手は小刻みに慄えていた。
「良い飲みっぷりだ」
 お絹の白い喉を眺めて、吉之助が冷笑を刻んで頷いた。
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