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凍える月~吉之助の恋~
第2章 第一話 【凍える月~吉之助の恋~】 二
 灼けつくような苦みが喉許を通り過ぎてゆく。お絹は一挙に酒を飲み、むせた。あまりの息苦しさにむせ、烈しく咳き込んだために涙目になる。その場に突っ伏したお絹を吉之助はなおも酷薄な眼で眺め下ろしていた。
「大方、酒もろくに飲んだことのないお嬢ちゃんだろうよ」
 吉之助の手がお絹の背を撫でる。いきなり後ろから抱きしめられて、お絹は狼狽えた。
「いやっ」
 力の限り抵抗したが、お絹の抵抗は難なく押さえ込まれてしまう。お絹は屋台も楽々と引けるほどの力自慢だが、吉之助は並の力ではなかった。
 お絹自身は知らないが、実は、吉之助は少年の頃、以蔵の許を離れ、力士を夢見て幕下で修業していたことがあるのだ。
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