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凍える月~吉之助の恋~
第12章 第五話 【雪うさぎ】 壱
日記を書き始めたのには、そのような背景があったわけだ。〝先生〟の寺子屋の生徒ではなくなっても、お絹は今も〝先生〟とは親しく行き来している。他の女房連中と同様に、惣菜やら、時には〝先生〟の何よりの愉しみの酒を持ってゆくお絹は今も〝先生〟の眼には十年前と変わらぬ童女に映るらしい。お絹を見ると、〝おう、来たか、お絹坊〟と眼を和ませる。
そんな先生の純朴さ、飾りのない優しさを、お絹は子どもの頃から大好きだった。普段から書いている日記は、〝先生〟の寺子屋で子どもたちが使う紙(反故紙)を分けて貰っている。日記というよりは、どちらかと言えば、随筆文のようなものである。気ままに書き散らし、ある程度の量になれば紐で綴じて冊子のようにまとめる。
そんな先生の純朴さ、飾りのない優しさを、お絹は子どもの頃から大好きだった。普段から書いている日記は、〝先生〟の寺子屋で子どもたちが使う紙(反故紙)を分けて貰っている。日記というよりは、どちらかと言えば、随筆文のようなものである。気ままに書き散らし、ある程度の量になれば紐で綴じて冊子のようにまとめる。