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凍える月~吉之助の恋~
第12章 第五話 【雪うさぎ】 壱
「おお、寒」
 お絹が思わず呟きを洩らしたその時、外からいさかいの声が聞こえてきた。
「何ゆえ、江戸に出て参ったのだ。わしはそなたにあれほど来てはならぬと申したであろう」
 お絹はハッとした。これは他ならぬ〝先生〟の声だ。
「帰れ、今すぐに帰るのだ」
 あまりの見幕に、お絹は息を呑んだ。子どもの頃から先生を知っているが、このように烈しい一面を見たことは一度もない。
「そなたと今更、話すことなぞない」
 無情に言い放つ声に、女の声が重なった。
「あなた―」
 女が縋るような声で言う。お絹はたまらなくなって外へ出た。
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