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凍える月~吉之助の恋~
第2章 第一話 【凍える月~吉之助の恋~】 二
子のない以蔵は吉之助を深川で小料理屋をやらせている内縁の妻に育てさせた。その内妻も既に亡いが、一味の誰もが以蔵の跡目を継ぐのは吉之助だと思っている。
以蔵一味の掟として、勝手に抜けることは許されない。本来なら、無断で飛び出した吉之助は即刻「処分」、つまり殺されるはずである。
が、吉之助は厳しい相撲の世界に長くいることはできず、再び以蔵の許に舞い戻ってきた。吉之助を自分の後釜に据えようと目論んでいる以蔵は今回に限り、大目に見ることにしたのだ。それは吉之助に対する情からではなく、己れの利のためであった。
いかに並の男よりは力のあるお絹も力士崩れには敵わないのは当然だった。
「いやっ―!!」
お絹の悲鳴が夜のしじまに空しく消えていった。
以蔵一味の掟として、勝手に抜けることは許されない。本来なら、無断で飛び出した吉之助は即刻「処分」、つまり殺されるはずである。
が、吉之助は厳しい相撲の世界に長くいることはできず、再び以蔵の許に舞い戻ってきた。吉之助を自分の後釜に据えようと目論んでいる以蔵は今回に限り、大目に見ることにしたのだ。それは吉之助に対する情からではなく、己れの利のためであった。
いかに並の男よりは力のあるお絹も力士崩れには敵わないのは当然だった。
「いやっ―!!」
お絹の悲鳴が夜のしじまに空しく消えていった。