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凍える月~吉之助の恋~
第12章 第五話 【雪うさぎ】 壱
「よろしければ、私の家で少しお休みになってはいかがでしょうか」
お絹が控えめに言うと、女は微笑した。
「どこのどなたかは存じませぬが、ご親切に、ありがとうございます。されど、この近くの旅籠に宿を取っておりますので、どうかお気遣いなく」
女は丁重に頭を下げると、ゆっくりと雪の中を去っていこうとする。お絹とふと思いついて、家に取って返すと、傘を持ってきた。
歩いてゆく女に追いつき、そっと傘を差しかける。
「どうかこれをお持ち下さいませ」
女は頷くと、もう一度頭を下げ、受け取った傘を持って歩み去った。朱塗りの傘は降りしきる雪に遮られ、直に見えなくなった。
お絹が控えめに言うと、女は微笑した。
「どこのどなたかは存じませぬが、ご親切に、ありがとうございます。されど、この近くの旅籠に宿を取っておりますので、どうかお気遣いなく」
女は丁重に頭を下げると、ゆっくりと雪の中を去っていこうとする。お絹とふと思いついて、家に取って返すと、傘を持ってきた。
歩いてゆく女に追いつき、そっと傘を差しかける。
「どうかこれをお持ち下さいませ」
女は頷くと、もう一度頭を下げ、受け取った傘を持って歩み去った。朱塗りの傘は降りしきる雪に遮られ、直に見えなくなった。