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凍える月~吉之助の恋~
第12章 第五話 【雪うさぎ】 壱
「先生―」
お絹が物言いたげな瞳で見つめると、先生は強ばった顔で言った。
「そなたには拘わりなきことだ、お絹坊」
その口調は、すべてのものを拒絶するような頑なさがある。硬い表情、冷たい声。一度としてこれまでお絹が見たことのない先生であった。お絹に断じると、先生はくるりと踵を返して、斜向かいの家に消えた。お絹の住まいの斜め前が先生の住まいであり、長屋の子どもたちの集まる教室である。
近頃では評判を聞きつけた近隣の商家の主人が倅を手習いによこすこともあり、塾生の数は増える一方で、四畳半ひと間では大勢の子どもたちが収まり切らないという事態が出来している。いっそのこと、教室をどこかの店の離れに移さないか―といった誘いも倅を通わせているお店(たな)の主から出ているという。
お絹が物言いたげな瞳で見つめると、先生は強ばった顔で言った。
「そなたには拘わりなきことだ、お絹坊」
その口調は、すべてのものを拒絶するような頑なさがある。硬い表情、冷たい声。一度としてこれまでお絹が見たことのない先生であった。お絹に断じると、先生はくるりと踵を返して、斜向かいの家に消えた。お絹の住まいの斜め前が先生の住まいであり、長屋の子どもたちの集まる教室である。
近頃では評判を聞きつけた近隣の商家の主人が倅を手習いによこすこともあり、塾生の数は増える一方で、四畳半ひと間では大勢の子どもたちが収まり切らないという事態が出来している。いっそのこと、教室をどこかの店の離れに移さないか―といった誘いも倅を通わせているお店(たな)の主から出ているという。