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凍える月~吉之助の恋~
第12章 第五話 【雪うさぎ】 壱
何でも亡くなった隠居の住居として使っていた庭の離れが空いているので、そちらを寺子屋の教室として使って貰えまいかという申し出があったそうだ。
今のところ、先生にはその気はないようだが、もしそうなれば、先生の手習い指南もれきとした塾となり、今よりは幾分かでもマシな報酬を得ることができるはずであった。もっとも、そうなれば、裏店の子どもたちは気軽に通うことはできず、もしかしたら、止めなければならないかもしれない。長屋の子どもたちの親には、ちゃんとした塾に子を行かせるような余裕はないのだから。
先生のためには、寺子屋がちゃんとしたものだと認められるのはむろん良いことなのだが、長屋の子らにとってはむしろ不幸なことだというのは、何とも皮肉なものだ。
今のところ、先生にはその気はないようだが、もしそうなれば、先生の手習い指南もれきとした塾となり、今よりは幾分かでもマシな報酬を得ることができるはずであった。もっとも、そうなれば、裏店の子どもたちは気軽に通うことはできず、もしかしたら、止めなければならないかもしれない。長屋の子どもたちの親には、ちゃんとした塾に子を行かせるような余裕はないのだから。
先生のためには、寺子屋がちゃんとしたものだと認められるのはむろん良いことなのだが、長屋の子らにとってはむしろ不幸なことだというのは、何とも皮肉なものだ。