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凍える月~吉之助の恋~
第12章 第五話 【雪うさぎ】 壱
けして男女の情ではないけれど、あのひととき、二人の魂がほんの一瞬触れ合ったことは真実なのだ。もしかしたら、それは良人伊八への裏切りになるのだろうか。すべてを受け容れた上で自分とお彩を愛してくれる伊八を―。
だが、お絹が時として伊八を拒んでしまうのは、吉之助の存在が原因ではない。吉之助に犯されたときの底知れぬ恐怖や絶望感からくるものだ。
想いに沈むお絹の耳を、伊八の声が打った。
「判ったな、絶対に妙な気を起こすんじゃねえぞ。それに、先生には先生なりの事情ってえものがあるんだ。何にも知らねえお前がやたらと拘わるのは、かえって良くねえかもしれないんだぜ」
伊八が念を押すように言う。
だが、お絹が時として伊八を拒んでしまうのは、吉之助の存在が原因ではない。吉之助に犯されたときの底知れぬ恐怖や絶望感からくるものだ。
想いに沈むお絹の耳を、伊八の声が打った。
「判ったな、絶対に妙な気を起こすんじゃねえぞ。それに、先生には先生なりの事情ってえものがあるんだ。何にも知らねえお前がやたらと拘わるのは、かえって良くねえかもしれないんだぜ」
伊八が念を押すように言う。