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凍える月~吉之助の恋~
第12章 第五話 【雪うさぎ】 壱
お絹は微笑して頷いたが、伊八はどうもまだ心配なようである。その時、お彩の甲高い泣き声が響いて、その話は終わった。どうやら大好きなおとっつぁんが話に夢中でいっかな相手をしてくれないので、お彩が堪忍袋の緒を切らしたらしい。
―全っく、うちの人ときたら、お彩には甘いんだから。
今からこんな風では、先が思いやられてしまう。
伊八は泣き喚くお彩を肩車して狭い部屋中を歩き回っている。お絹は伊八を見て、心で呟いたのだが、実は伊八は娘のお彩によりも女房のお絹にいっとう甘いのだということに、お絹自身は気付いてはいない。
外では相も変わらず雪が降り続いている。
江戸の師走の夜はしんしんと更けてゆく。
―全っく、うちの人ときたら、お彩には甘いんだから。
今からこんな風では、先が思いやられてしまう。
伊八は泣き喚くお彩を肩車して狭い部屋中を歩き回っている。お絹は伊八を見て、心で呟いたのだが、実は伊八は娘のお彩によりも女房のお絹にいっとう甘いのだということに、お絹自身は気付いてはいない。
外では相も変わらず雪が降り続いている。
江戸の師走の夜はしんしんと更けてゆく。