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凍える月~吉之助の恋~
第13章 第五話 【雪うさぎ】 弐
今日も伊八は喜作親方の許へ出かけていった。どうやら、親方が風邪を引いて寝込んでいるらしく、その看病に行くのだと話していた。お絹も行こうかと言ったのだが、〝お彩に感染(うつ)るといけねえから〟と、伊八は一人で出ていったのだ。
何しろ、親方は年が明ければ、六十、還暦である。当時としてはかなりの高齢だから、伊八が案ずるのも当然のことであった。
お絹も昨夜の夕飯のおかずの大根の煮付けを深皿に入れて、伊八にことづけた。親方は伊八の育ての親と言っても良い。伊八は近在の小さな村から出てきて、十五で喜作の許に弟子入りしたのだ。呑んだくれの父親にはさんざん苦労させられた伊八は喜作を実の父のように大切に思っている。
何しろ、親方は年が明ければ、六十、還暦である。当時としてはかなりの高齢だから、伊八が案ずるのも当然のことであった。
お絹も昨夜の夕飯のおかずの大根の煮付けを深皿に入れて、伊八にことづけた。親方は伊八の育ての親と言っても良い。伊八は近在の小さな村から出てきて、十五で喜作の許に弟子入りしたのだ。呑んだくれの父親にはさんざん苦労させられた伊八は喜作を実の父のように大切に思っている。