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凍える月~吉之助の恋~
第13章 第五話 【雪うさぎ】 弐
―親方の具合が早く良くなれば良いのだけれど。
お絹がそんなことを思って家の中に引っ込もうとした時、〝先生〟の住まいの前に所在なげに立つ女性の後ろ姿が眼に入った。間違いなく、先生の奥方である。
「あの―」
お絹は思うより先に呼び止めていた。
女性がハッとしたように振り向く。その貌には愕きの表情が浮かんでいた。
「先生なら、今は散歩に出ていらっしゃると思います。毎朝、この時間はいつも外歩きをなさると決めてるようですよ」
お絹が言うと、女は微笑んだ。
「そうですか」
「もう少しお待ちになれば、直にお戻りになると思います」
お絹がそんなことを思って家の中に引っ込もうとした時、〝先生〟の住まいの前に所在なげに立つ女性の後ろ姿が眼に入った。間違いなく、先生の奥方である。
「あの―」
お絹は思うより先に呼び止めていた。
女性がハッとしたように振り向く。その貌には愕きの表情が浮かんでいた。
「先生なら、今は散歩に出ていらっしゃると思います。毎朝、この時間はいつも外歩きをなさると決めてるようですよ」
お絹が言うと、女は微笑んだ。
「そうですか」
「もう少しお待ちになれば、直にお戻りになると思います」