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凍える月~吉之助の恋~
第13章 第五話 【雪うさぎ】 弐
「あの方は昔から、明るくて誰とでも気さくに付き合うひとでした。私どもには子どもはおりませんが、岩倉は大変な子ども好きなのですわ。大勢の子どもに日々囲まれ慕われて―、あのひとはあのひとなりの幸せな十年を過ごしたのですね」
その口調にはホッとしたような安堵の響きがある。里絵が心から拓馬の身を思っていることが知れた。
「明日、国に帰ります。本当はここへも来るまいと思っていたのですけれど、つい足が勝手にこっちに向かってしまって、気が付いたら、この長屋の前にいました。未練な女ですわね。こんな風だから、あのひとにも愛想を尽かされるのですね」
しまいの言葉はどこか自嘲めいてさえいた。
その口調にはホッとしたような安堵の響きがある。里絵が心から拓馬の身を思っていることが知れた。
「明日、国に帰ります。本当はここへも来るまいと思っていたのですけれど、つい足が勝手にこっちに向かってしまって、気が付いたら、この長屋の前にいました。未練な女ですわね。こんな風だから、あのひとにも愛想を尽かされるのですね」
しまいの言葉はどこか自嘲めいてさえいた。