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凍える月~吉之助の恋~
第13章 第五話 【雪うさぎ】 弐
「奥様」
お絹が言いかけようとすると、里絵は微笑した。
「私がここに来たということは、岩倉には言わないで下さい。これ以上、みっともない真似を見せて、嫌われたくはありません」
里絵はそう言うと、昨日お絹が貸した傘を礼の言葉と共に返してよこし、後は小さく会釈して逃げるように立ち去った。とても淋しげな笑顔だった。お絹が四つの時、母は病で亡くなっている。ゆえに、お絹の中の母の記憶は極めて曖昧だが、もし生きていれば、丁度、里絵ほどの歳であろうと思う。
一方、拓馬は父参次とほぼ同年だ。二人とも、お絹の両親と言って良い年格好である。
お絹が言いかけようとすると、里絵は微笑した。
「私がここに来たということは、岩倉には言わないで下さい。これ以上、みっともない真似を見せて、嫌われたくはありません」
里絵はそう言うと、昨日お絹が貸した傘を礼の言葉と共に返してよこし、後は小さく会釈して逃げるように立ち去った。とても淋しげな笑顔だった。お絹が四つの時、母は病で亡くなっている。ゆえに、お絹の中の母の記憶は極めて曖昧だが、もし生きていれば、丁度、里絵ほどの歳であろうと思う。
一方、拓馬は父参次とほぼ同年だ。二人とも、お絹の両親と言って良い年格好である。