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凍える月~吉之助の恋~
第13章 第五話 【雪うさぎ】 弐
更に―、思いもかけぬ形で悲劇が起こった。望月頼母が切腹して果て望月家も断絶となった直後のことである。安田治部承は藩から永の追放の沙汰を受けたものの、勘定方の次役榊原釆女(さかきばらうねめ)は詮議は受けたが、特にお咎めはなかった。しかし、釆女も頼母に与し、公金を横流ししていた不逞の輩に相違なかったのである。
ある時、拓馬の同輩の鈴木又之進(すずきまたのしん)という若い男が釆女を城外で待ち伏せて、不正について質した。すると、釆女はいきなり抜刀して又之進に斬りかかり、又之進もやむなく刀を抜いて戦った。そして、打ち合う中(うち)に又之進は釆女を誤って殺してしまったのだ。
拓馬がお絹を見つめた。
「又之進の妻女は身重で、まもなく初めての子が生まれる身だった」
その言葉に、お絹は眼を見開いた。
ある時、拓馬の同輩の鈴木又之進(すずきまたのしん)という若い男が釆女を城外で待ち伏せて、不正について質した。すると、釆女はいきなり抜刀して又之進に斬りかかり、又之進もやむなく刀を抜いて戦った。そして、打ち合う中(うち)に又之進は釆女を誤って殺してしまったのだ。
拓馬がお絹を見つめた。
「又之進の妻女は身重で、まもなく初めての子が生まれる身だった」
その言葉に、お絹は眼を見開いた。