この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
凍える月~吉之助の恋~
第2章 第一話 【凍える月~吉之助の恋~】 二
だが、吉之助が腰を動かしながらお絹の胸の頂を口に含んだその刹那、あえかな声を洩らした。
その夜、お絹は吉之助に思うがままに翻弄された。残酷だったのは、お絹の身体がその烈しい責め苦と愛撫に十分に応えたということだ。その事実にお絹は絶望した。
冬の嵐のような一刻(ひととき)が過ぎ去った後、お絹は、茫然と部屋の丸窓の傍に座っていた。手を伸ばすと、丸窓にはめ込んだ破(や)れ障子が少し動く。お絹は障子窓を細く開けた。
女人の繊細な眉のような月が紫紺の空に浮かんでいる。夜の底に沈んだ樹々の影が黒々と地面に落ちていた。伸び放題になった雑草や樹々の中、ふと鮮やかな色がお絹の眼を射た。艶(つや)やかな紅色と汚れなき純白の二色(ふたいろ)の藪椿が花を咲かせている。椿の樹もむろん伸びるに任せ、枝葉を繁らせていたが、一つの樹に二色の花が咲くとは、珍しいことである。
その夜、お絹は吉之助に思うがままに翻弄された。残酷だったのは、お絹の身体がその烈しい責め苦と愛撫に十分に応えたということだ。その事実にお絹は絶望した。
冬の嵐のような一刻(ひととき)が過ぎ去った後、お絹は、茫然と部屋の丸窓の傍に座っていた。手を伸ばすと、丸窓にはめ込んだ破(や)れ障子が少し動く。お絹は障子窓を細く開けた。
女人の繊細な眉のような月が紫紺の空に浮かんでいる。夜の底に沈んだ樹々の影が黒々と地面に落ちていた。伸び放題になった雑草や樹々の中、ふと鮮やかな色がお絹の眼を射た。艶(つや)やかな紅色と汚れなき純白の二色(ふたいろ)の藪椿が花を咲かせている。椿の樹もむろん伸びるに任せ、枝葉を繁らせていたが、一つの樹に二色の花が咲くとは、珍しいことである。