この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
凍える月~吉之助の恋~
第2章 第一話 【凍える月~吉之助の恋~】 二
凍てついた真冬の夜気の中、紅白の花が幾つか、凛と咲き誇っている。誰にも眼に止まることのない場所でひっそりと咲く花の姿は、お絹の心を打った。
眉月が澄んだ光で二色の花を夜陰に浮かび上がらせている。その光に包まれれば、瞬時に何もかもが凍りついてしまうのではないかと思うほどの冴えた月だ。それを見つめているお絹の眼に大粒の涙が溢れた。
「良い加減に無駄な悪あがきは止めたら、どうだ?」
いつしか眠っていたかと思った吉之助が側にいた。
「お前の身体はもう俺に馴れちまってる。今更、元の純情な娘には戻れっこねえぜ」
お絹は振り返った。吉之助が酷薄な笑いを浮かべる。まるで、空に浮かぶ細い月のような冷たい美貌だ。
眉月が澄んだ光で二色の花を夜陰に浮かび上がらせている。その光に包まれれば、瞬時に何もかもが凍りついてしまうのではないかと思うほどの冴えた月だ。それを見つめているお絹の眼に大粒の涙が溢れた。
「良い加減に無駄な悪あがきは止めたら、どうだ?」
いつしか眠っていたかと思った吉之助が側にいた。
「お前の身体はもう俺に馴れちまってる。今更、元の純情な娘には戻れっこねえぜ」
お絹は振り返った。吉之助が酷薄な笑いを浮かべる。まるで、空に浮かぶ細い月のような冷たい美貌だ。