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凍える月~吉之助の恋~
第13章 第五話 【雪うさぎ】 弐
「そうだな、お絹坊の言うように、確かに、わしは馬鹿な男やもしれぬ。あの折、里絵は泣いて付いてくると申したが、不正を重ねていた輩とはいえ、仮にも上司を斬ったのだ、見つかれば死罪は免れぬ。そんな危険な旅に里絵を伴うことはできぬと、泣く里絵を無理に置いて、振り切るように河北を出た。あの日がもうはるかに遠き昔のような気がしてならぬ」
そう語る拓馬の眼は当時を見ているかのように、はるかに遠い。
お絹はすかさず言った。
「それなら、先生、なおのこと、奥様にお逢いになって下さい。奥様はきっと先生にお逢いになりたい一心で遠い河北藩から江戸までの長い道中を辛抱なさったのだと思いますよ」
そう語る拓馬の眼は当時を見ているかのように、はるかに遠い。
お絹はすかさず言った。
「それなら、先生、なおのこと、奥様にお逢いになって下さい。奥様はきっと先生にお逢いになりたい一心で遠い河北藩から江戸までの長い道中を辛抱なさったのだと思いますよ」