この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
凍える月~吉之助の恋~
第2章 第一話 【凍える月~吉之助の恋~】 二
この男の眼差しには、見つめられる者の心を氷らせてしまう冷たさが潜んでいる。美しき面に浮かぶのは、常世の国より来た死に神のごとき禍々しくも妖しい微笑である。
お絹が無言でいると、吉之助は肩をすくめた。
「俺の女にならねえか? 何なら、正式な女房にしてやっても良いぞ」
短い沈黙があった。お絹はなおも喋ろうとしない。吉之助の前での彼女はいつもこんな風に、喋るどころか笑うこともなく、まるで心をどこかに置き忘れてきてしまったかのようだ。
「もう良いッ。強情でいられるのも今の中(うち)だ。いずれにせよ、お前の生きてゆく場所は、もうここしかねえんだからな」
吉之助は皮肉げに言い捨てると、足音も荒く部屋を出ていきかけた。その間際、ふとお絹に毒の言葉を流し込んだ。
お絹が無言でいると、吉之助は肩をすくめた。
「俺の女にならねえか? 何なら、正式な女房にしてやっても良いぞ」
短い沈黙があった。お絹はなおも喋ろうとしない。吉之助の前での彼女はいつもこんな風に、喋るどころか笑うこともなく、まるで心をどこかに置き忘れてきてしまったかのようだ。
「もう良いッ。強情でいられるのも今の中(うち)だ。いずれにせよ、お前の生きてゆく場所は、もうここしかねえんだからな」
吉之助は皮肉げに言い捨てると、足音も荒く部屋を出ていきかけた。その間際、ふとお絹に毒の言葉を流し込んだ。