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凍える月~吉之助の恋~
第14章 第六話 【対岸の恋人】
満々と青い水を湛えた川が穏やかな秋の陽を浴びていた。お絹はたっぷりとした青い流れを見つめながら、思わず感嘆の吐息を洩らした。むろん、それは既に十分に老齢と呼べる喜作を伴っての長旅の半分をとりあえずは無事に終えたという安堵からくるものでもあった。これは、江戸を出て主街道を西に進んでゆく旅人がまず最初に出くわす大きな川である。江戸を発ってから一日半、初めの日は最初の宿場町に泊まったが、それ以外はおよそ休憩は取らずに歩き続けてきた。
お絹は六十八という喜作の歳を気遣い、それとなしに休みを取るように勧めてはいたけれど、頑固な喜作はその度にむっつりと黙り込んで首を振るだけだった。
お絹は六十八という喜作の歳を気遣い、それとなしに休みを取るように勧めてはいたけれど、頑固な喜作はその度にむっつりと黙り込んで首を振るだけだった。