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凍える月~吉之助の恋~
第14章 第六話 【対岸の恋人】 
 元々、飾り職人になりたいといういっぱしの夢を抱いて、故郷を身一つで飛び出した喜作であったのである。
 話によれば、喜作のたった一人の妹は嫁ぎ、両親はとうに亡くなって家は絶えたという。村に帰ったとて、既に喜作の生まれ育った小さな家は跡形もなかろうが、それでもなお、喜作は死ぬ前に一度ふるさとを見てみたいのだと涙ながらに伊八に語ったのだった。
―俺が親方を連れてゆくことができれば良いんだが、生憎、当分は仕事が山ほどもあって身動きが取れそうにねえ。そこでだ、お前に頼みてえというのは、他でもねえ、親方と一緒にその故郷の村に行って欲しいってこさなんだ。
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