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凍える月~吉之助の恋~
第14章 第六話 【対岸の恋人】
喜作にとって、この川は幸薄い子ども時代の中の数少ない幸せな体験に繋がるものであった。
「お絹ちゃん、ありがとうよ。もう十分だ。明日の朝、江戸に向けて発とう。お彩坊もお前の帰りを待ってるだろうし、お彩坊よりも伊八の方がもっと首を長くしてお前さんの帰りを待ち侘びてるだろうぜ」
いつもむっつりとしているように見える親方だが、その素顔は存外に茶目っ気のある悪戯っ子のようなところがある。その点、伊八と親方は実の親子以上に性格が似ている。
「恋女房をそういついつまでも借りていたとなりゃあ、気の好いあいつもしまいには堪忍袋の緒を切らすことだろうて」
その言葉に、お絹は思わず頬を赤らめた。
「お絹ちゃん、ありがとうよ。もう十分だ。明日の朝、江戸に向けて発とう。お彩坊もお前の帰りを待ってるだろうし、お彩坊よりも伊八の方がもっと首を長くしてお前さんの帰りを待ち侘びてるだろうぜ」
いつもむっつりとしているように見える親方だが、その素顔は存外に茶目っ気のある悪戯っ子のようなところがある。その点、伊八と親方は実の親子以上に性格が似ている。
「恋女房をそういついつまでも借りていたとなりゃあ、気の好いあいつもしまいには堪忍袋の緒を切らすことだろうて」
その言葉に、お絹は思わず頬を赤らめた。