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凍える月~吉之助の恋~
第15章 第六話 【対岸の恋人】 弐
其の弐
その夜、お絹と喜作は川のほとりの小さな旅籠に投宿した。だが、夜半から天候が一変した。秋の陽が山の端に沈む頃にはまだ鮮やかな夕暮れ空が臨めるほどであったのに、宵には風に生温いものが混じり始め、空が無気味な黒雲に覆い尽くされた。清らかに地上を照らしていた半月も姿を隠し、すべてが闇の底に沈んだ。
次第に夫気味さを増してゆく夜の空を部屋の窓から見上げ、喜作は低く呟いた。
「この分では嵐になるな。この季節だから、もしかしたら、野分かもしれねえ」
その夜、お絹と喜作は川のほとりの小さな旅籠に投宿した。だが、夜半から天候が一変した。秋の陽が山の端に沈む頃にはまだ鮮やかな夕暮れ空が臨めるほどであったのに、宵には風に生温いものが混じり始め、空が無気味な黒雲に覆い尽くされた。清らかに地上を照らしていた半月も姿を隠し、すべてが闇の底に沈んだ。
次第に夫気味さを増してゆく夜の空を部屋の窓から見上げ、喜作は低く呟いた。
「この分では嵐になるな。この季節だから、もしかしたら、野分かもしれねえ」