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凍える月~吉之助の恋~
第15章 第六話 【対岸の恋人】 弐
物凄い強風が吹いたときには、その衝撃で小さな建物が根こそぎ倒れてしまうのではないか、そう思えるほどだった。その中には雨も降り始め、ゴオッーという獣の唸り声のような音さえ混じり、烈しい風雨は容赦なく地上を襲った。
この頃には流石に、どの客も不安を隠せないように見えた。ただ寝苦しいといっただけではない理由から、お絹もまた眼を見開いて不安げに空の様子を窺っていた。喜作はといえば、剥げかかった壁にもたれ、うっすらと眼を閉じている。その様子からでは眠っているのかは判然としない。
その時、ひときわ大きな音が小さな旅籠をすっほりと包み込んだ。轟音が轟き、部屋が大きく揺れた。立て付けの悪い障子窓など一辺に吹き飛んでしまうかのような突風だ。
この頃には流石に、どの客も不安を隠せないように見えた。ただ寝苦しいといっただけではない理由から、お絹もまた眼を見開いて不安げに空の様子を窺っていた。喜作はといえば、剥げかかった壁にもたれ、うっすらと眼を閉じている。その様子からでは眠っているのかは判然としない。
その時、ひときわ大きな音が小さな旅籠をすっほりと包み込んだ。轟音が轟き、部屋が大きく揺れた。立て付けの悪い障子窓など一辺に吹き飛んでしまうかのような突風だ。