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凍える月~吉之助の恋~
第15章 第六話 【対岸の恋人】 弐
翌朝。
果たして、喜作予言は的中した。
あれほど吹き荒れて人々を不安のどん底にいざなった風雨は一夜明けて、ピタリと止んだ。空はからりとどこまでも青く晴れ上がり、風さえもなかった。ただ、川だけは嵐の名残を存分にとどめており、濁った水が溢れそうなほどになっていた。
お絹は喜作と簡素な朝飯を取った後、宿屋を抜けて、川原へと出た。むろん、太り肉の女将は「危ないから」と止めたけれど、そんなことには頓着しない。
「あんな水の溢れ返った川を見にいくだなんて、何を考えてんだか。うっかり脚を滑らせたら、それこそお陀仏、一巻の終わりじゃないか」
真顔で憤慨する女将は案外に人が好いのかもしれない。お絹は改めて女将を見直す気になっていた。
果たして、喜作予言は的中した。
あれほど吹き荒れて人々を不安のどん底にいざなった風雨は一夜明けて、ピタリと止んだ。空はからりとどこまでも青く晴れ上がり、風さえもなかった。ただ、川だけは嵐の名残を存分にとどめており、濁った水が溢れそうなほどになっていた。
お絹は喜作と簡素な朝飯を取った後、宿屋を抜けて、川原へと出た。むろん、太り肉の女将は「危ないから」と止めたけれど、そんなことには頓着しない。
「あんな水の溢れ返った川を見にいくだなんて、何を考えてんだか。うっかり脚を滑らせたら、それこそお陀仏、一巻の終わりじゃないか」
真顔で憤慨する女将は案外に人が好いのかもしれない。お絹は改めて女将を見直す気になっていた。